エサレン研究所の歴史は、1960年代の米国カリフォルニア州で、スタンフォード大学時代に友人であった、リチャード・プライスとマイケル・マーフィーの出会いから始まります。当時のカリフォルニアでは、従来の西洋文化の枠組みを超え、東洋思想に影響を受けた新しいムーブメントが起こっていました。二人は、そんな時代の潮流のさなかに出会い、共に、人間の潜在的可能性(ヒューマン・ポテンシャル)運動をおこすためのコミュ二ティ・センターを設立することを志しました。そして、1962年、 マイケル・マーフィーの家族の所有地であった、カリフォルニアのビッグサーの温泉地に、滞在型のセンターを立ち上げ、かつてその地に暮らしていたネイティブ・アメリカンの部族の名前をとって“エサレン研究所”と名づけました。
ビッグサーの地は太平洋を臨み、波の音の響く、温泉の湧き出る、自然豊かな風光明媚な土地で、以前から多くの目覚めたパイオニア達が移り住むところでした。以来、ボディ・マインド・スピリットを総合的に探求するセンターとして、エサレン研究所は、全米でも広く信頼を集め、多くの哲学者や文学者、心理療法家、身体技法研究家、アーティストがここに集い、交流し、様々な実験的な試みを展開しました。
心理学分野では、ゲシュタルト心理療法の創始者、フリッツ・パールズ、人間性心理学とトランスパーソナル心理学の創始者である、アブラハム・マズロー、プロセス指向心理学のアーノルド・ミンデル、また、グレゴリー・ベイトソンやカール・ロジャースもここに訪れ滞在しました。ボディワーク、ソマティックス(身体学)分野では、ロルフ式身体統合法(ロルフィング)のアイダ・ロルフが、そして、センサリー・アウエアネスのシャーロット・セルバーがいました。 その後、フェルデンクライス・メソッドのモーシェ・フェルデンクライス、トレガー・アプローチのミルトン・トレガー博士がここに訪れ、そしてワークショップを開催しました。
また、東洋的な心身一如の身体観が、ヨガ・瞑想・気功・太極拳・禅・合気道などを通じて、60年代の西海岸に広まったことも、エサレン研究所の歴史に重要な意味をもたらしました。アラン・ワッツ(禅)やジョージ・レナード(合気道)もエサレン研究所に頻繁に訪れ、滞在し、互いに意見交換をしました。こころと身体を別々のものとしてとらえる、従来の西洋医学の心身二元論に対して、心身一如を前提とする東洋的な身体観は、エサレン研究所での基本的な思想として定着し、西海岸で広まったホリスティック医療の基盤ともなりました。
現在でも年間を通じて、常時、複数のワークショップが、このエサレン研究所でおこなわれています。その種類は多様で、ヨガや太極拳などの東洋的な身体アプローチや、ソマティックス・ボディワーク、トランスパーソナル心理学、コミュニケーション、シャーマニズム、アート、音楽、ダンス、エコロジーなど、様々な分野に広がります。 設立以来ずっと、そこに訪れる大勢の人々が、この美しいビッグサーの地に足を運び、ワークショップのクラスだけではなく、食堂や温泉、セッションルームで、語らい、そして、交流を重ねてきた歩みそのものが、エサレン研究所の歴史だといえるでしょう。
参考文献 「エスリンとアメリカの覚醒 - 人間の可能性への挑戦 」
<W.T アンダーソン著、伊藤博訳、(誠信書房) Esalen and American Awakening >
米国カリフォルニア州、エサレン研究所(Esalen Institute)
公式ホームページ http://www.esalen.org/
エサレン®ボディワークは、エサレン研究所の豊かな自然と歴史に育まれながら、様々なメソッドを学んだボディワーカー達が、注意深く実践を重ねながら、全身のオイルトリートメントとしてまとめあげてきたものです。
エサレン研究所の目指す、ヒューマンポテンシャル運動は、エサレン®ボディワークの原点だといえるでしょう。人間性心理学/トランスパーソナル心理学の祖であるアブラハム・マズローの、「人間は、生まれながらに全体的で統合された存在である」という言葉にもあるように、エサレン®ボディワークは、人間の全体性をテーマとし、固定観念によって抑圧され、疎外されてきたヒューマンポテンシャル(人間の潜在的可能性)の目覚めを通じて、人間にそなわっている“自己治癒、自然治癒力”を豊かな在り様へと導き、本来の自分を取り戻すことを目的とします。
こうした背景から、「ゆっくりと、呼吸とともに、“今、ここ”の気づきをもって、あるがままを受け入れ、全体をつなげる」という、エサレン®ボディワーク独特のスタイルと哲学が育成されていきました。身体全体をつなげるロングストローク、波のようなリズム、ゆったりとしたストレッチ、軽い揺らし、身体の深部への注目など、様々なアプローチ法が、自分が部分からなるバラバラな存在ではなく、一つの全体的な存在であることを思い出させてくれます。
プラクティショナーは受け手の呼吸、体温、筋肉の状態の変化など、全身の反応を確認しつつ、気づきとともに、おだやかに働きかけていきます。受け手は、そのように触れられることにより深いリラクセーションを感じ、緊張が解けていきます。緊張の解放は肉体レベルにとどまらず、エネルギーや情緒のレベルでも起こりえます。プラクティショナーは、受け手が自分の体で何が起こっているのかを感じられ、解放することができるようガイドとして働き、けっして無理に侵入することはありません。セッション中、受け手に対しての敬意、共に取組むという姿勢を常に心掛けています。
エサレン認定プラクティショナーは150時間以上のプロフェッショナル・トレーニングを受け、技術習得以外に、瞑想やダンス、ヨガ、ムーブメント、シェアリングなどを通じて、センタリング、グラウンディングなど施術者として大切な心身の在り方を学んでいきます。